阿彌陀經諺解 解題

  阿彌陀經とは?

≪阿彌陀經≫は≪佛説阿彌陀經≫の略称.淨土三部經のひとつ.一切諸佛所護念經(護念經,彌陀經)とも言う.これに口訣をふり,翻訳したのが≪阿彌陀經諺解≫である.この本の諺解文は≪月印釋譜≫巻7にあらわれる釋譜詳節部分とほぼ一致する.≪月印釋譜≫にあらわれる≪阿彌陀經≫対応部分は≪月印釋譜≫巻7の61張裏面から終わり(77張)までに収録されている.翻訳の大部分は首陽大君が編纂した≪釋譜詳節≫巻7に載っていたが,現在≪釋譜詳節≫の巻7は不伝である.
また,≪阿彌陀經≫の梵語名はSukhavativyuha-sutra[樂有莊嚴經]と言い,内容は大体以下の通り.

仏が祇園精舎で長老である舎利仏などのために,西方の阿弥陀仏とその国土である極楽世界の功徳と荘厳をおっしゃり,阿弥陀仏の名号を一心不乱に唱え,極楽世界に生まれると説き,六方(東西南北と上下)の多くの仏たちが釈迦牟尼の言葉が真実であることを証明し,念仏する衆生を仏が護念するのを説いた.

 

  阿彌陀經諺解の原刊本

現在伝わる原刊本は1970年代に公開された活字本である.校書館で刊行されたものと見られ,その後1464年(世祖10)に刊経都監で木版本が刊行された.
活字本(乙亥字)はハングル活字2種(中・小)が使われる.内容は後に重刊された木版本とほぼ一致する.口訣の傍点表記,仏教用語の漢字読音,諺解“둘어범그러이실”(6a:둘어실,木版本7a)が異なるのみ.仏教用語の漢字読音(“解”の字)から≪楞嚴經諺解≫の木版本(1462年/世祖8)より早い刊年のもの推定された.

     ※活字本≪阿彌陀經諺解≫については安秉禧(1992)第14章“활자본『阿彌陀經諺解』”を参照.

刊経都監版本の木版本は木版本は現在不伝.1464年に刊行されたというのは覆刻本の刊記を通してわかった事実とされているが,金英培(1997:40)はそれが間違いであると指摘している.

原刊本

  • 活字本:1461年(世祖7),校書館刊行,誠庵古書博物館所藏,乙亥字本.

  • 木版本:大邱個人所藏(?)

  • 本の大きさ:36.7cm×23.3cm

  • 四周単辺,有界,9行21字,註双行,大文字は1行16字.

  • 半葉匡郭:縦27.0cm×横19.4cm

  • 版口:白口

  • 魚尾:上下内向黒魚尾

  • 内題:佛説阿彌陀經

  • 版心題:阿彌陀經

 

  阿彌陀經諺解の重刊本

 

  最古の重刊本

1558年(明宗13)に全羅道徳龍山双渓寺で覆刻.東国大学校図書館所蔵,조명기氏所蔵.木版本としては現存する最古のもので30張1冊.

  • 本の大きさ:28.5cm×18.8cm

  • 四周単辺,有界,8行 本文19字(諺解は1字下げて18字),註双行.

  • 半葉匡郭:縦21.0cm×15.5cm

  • 版口:黒口

  • 魚尾:上下内向黒魚尾

  • 内題:佛説阿彌陀經

  • 版心題:阿彌陀經

本文は29張裏面2行で終わり,1行あけて第4行に巻末題「佛説阿彌陀經」があり,さらに1行あけて第6,7行で「順天八年甲申歳朝鮮國刊經都監奉/ヘ雕造」,第8行には「忠毅校尉行忠佐衛中部副司正臣安惠書」のように刊記と版下を書いた人を明らかにしている.この覆刻本は木版本の初刊本が伝わっていない現在,初刊本の姿を推し量ることのできる最古の本という点においてその価値がある.
     ※順天八年は1464年(世祖10年)

  ≪佛説阿彌陀經諺解≫ 1636年(仁祖14年) 水巌寺版,重刊本
  ≪佛説阿彌陀經諺解≫ 1648年(仁祖26年) 水巌寺版,重刊本

これは洪允杓(1984:81)に記述があるのみ.松広寺の旧版の刊記によるもの.17世紀の版本は上記の2つのみである.

  ≪佛説阿彌陀經諺解≫ 1702年(肅宗28年) 固城 雲興寺版,覆刻本

国立図書館일산文庫所蔵,奎章閣所蔵.奎章閣本は総30張1冊.表紙は改張されたものであるが,「佛説阿彌陀經」という題簽がある.

  • 本の大きさ:28.3cm×19.6cm

  • 四周単辺,有界,8行19字

  • 半葉匡郭:縦20.5cm×横15.2cm

  • 版口:白口

  • 魚尾:上下内向二葉花紋黒魚尾

  • 内題:佛説阿彌陀經

  • 施主名が毎張表右側下段に1名ずつ刻字されている.

この本は双渓寺本(1558年)と体裁が1-29張まで等しいが,第30張のみ体裁が異なる.30張表は「奉爲/ 聖壽萬歳/ 廻此功コ 普利群品/ 共覩彌陀 皆成正覺」という祈願が4行にわたり,5,6行は空け,7行下側に「構成理淵」,8行は空いている.裏面は施主帙で,最終行に「康熙四十一年壬午夏慶尚道固城臥龍山雲興寺開刊」という刊記で終わる.
雲興寺本は正陽社(1958年),亞細亞文化社(1974年),大堤閣(1977年)の影印がある.しかしこれら影印は原刊本の刊記で終わり覆刻本の刊記がなく,版本の区別ができない.奎章閣本中,가람本には刊記があり,一蓑本には刊記がない.

  ≪佛説阿彌陀經諺解≫ 1727年(英祖2年) 妙香山 普賢寺版

江田俊雄(1934/1977:340)で言及されたもの.その後の書誌関係文献では言及がない.共和国に伝わった可能性もある.

  ≪佛説阿彌陀經諺解≫ 1753年(英祖29年) 八公山 桐華寺版,覆刻本

51張1冊.現在所藏が確認されているのは以下の通り.

  • 国立図書館韋滄文庫

  • 서울大学校奎章閣(2冊)

  • 東国大学校(4冊)

  • 延世大学校

  • 天理大学図書館

  • 誠庵古書博物館

(以下,東国大学校図書館所蔵本に関する記述)
表紙は刊行当時のもので菱花版模様.5針眼訂法の線装本.表紙裏面には冊主の名前が書かれている.次の白紙1張にも同じ筆跡で名前と月日などが書かれている.さらに,その裏面には異なる筆跡で一句(글귀)が書かれている.「乾隆十八年十一月日字 公山 僧快善」の「佛説阿彌陀經刊行序」が5張ある.

  • 本の大きさ:29.1cm×19.0cm

  • 版式:四周双辺

  • 行款:有界,9行19字

  • 半葉匡郭:縦21.0cm×横14.9cm

  • 版口:白口

  • 魚尾:上下内向二葉花紋魚尾

  • 内題:佛説阿彌陀經

他の体裁は双渓寺本(1558年)と等しい.阿彌陀經は29張で終わり,続いて「王カ返魂傳」が9張,版心題が空白になり,下の花紋魚尾の上に「三十」という張次がある.表面施主帙が裏面8行まで,最終行に「乾隆十八年十一月日慶尚道大丘八公山桐華寺開刊」という刊記がある.この「三十」という張次は「阿彌陀經」が29張で終わったため,初めはそこに続いて刊記となっていたが,印刷製本しながら「王カ返魂傳」を追加したもの.ここまで「刊行序」5張,「阿彌陀經」29張,「王カ返魂傳」9張,「刊記」1張の合計44張であるが,その後ろに善導和尚の「臨終正念訣」と長盧頣禅師の「父母孝養文」が,各々原文と諺解で7張追加され,全51張で終わる.この2編の刊記は「乾隆六年辛酉季春慶尚道新寧八公山修道寺開刊」となっている.
しかし,桐華寺版本が全てこのように合綴(합철)されているのではない.이희승(1974)では「臨終正念訣」についてのみ言及しており,天理大の桐華寺版本は29張で終わり,覆刻本の刊記もない.

  ≪佛説阿彌陀經諺解≫ 1759年(英祖35年) 奉印寺版,重刊本
  ≪佛説阿彌陀經諺解≫ 1799年(正祖22年) 雲門寺版終声について

洪允杓(1994:87,91)による.その存在や所蔵などは不明.

  ≪佛説阿彌陀經諺解≫ 1871年(高宗8年) 水落山徳寺版

서울大学校奎章閣,東国大学校図書館所蔵.12張1冊.五針眼訂法の線装本.この本の題簽は「阿彌陀經諺譯附往生記」となっており,表紙は亜字紋の黄色表紙で刊行当時のものと見られる.

  • 本の大きさ:29.5cm×18.9cm

  • 版式:四周単辺

  • 行款:10行20字

  • 半葉匡郭:縦19.9cm×横13.5cm

  • 内題:佛説阿彌陀經

  • 版心題:彌陀經

表紙の次に版心がなく,表面には「彌陀三尊圖」,裏面には往生極楽を祈願する牌記があり,張次表示がされた1張1行目には題目がなくハングルで書いた文が始まる.これは念仏往生を勧めるもので3張裏面まで続くが,文章が終わらないまま第4張になる.第4張は最初の行に内題「佛説阿彌陀經」,2行に1文字下げて「삼쟝법사구마라습역」,3行から諺解本文が始まるが,これは諺解文というよりは「音訳」と言えるものである(例:여시아문오니 일시에 불이 ).これは第10張裏面9行で終わり,10行に尾題「불셜아미타경 죵」,第11張1行から「칠다라니」が続き,第12張表面4行からは「셩례졀」が裏面7行で終わり,8,․9行上段に「쥬상뎐하셩슈만셰」下段に「국민안/법륜상젼」の祈願があり,10行に「동치신미동랍양쥬슈락산덕간」という刊記で終わる.

  ≪佛説阿彌陀經諺解≫ 1881年(高宗18年) 普光寺淨願寺版
  ≪佛説阿彌陀經諺解≫ 1883年(高宗20年) 普光寺版

洪允杓(1994:97,98)による.

  ≪佛説阿彌陀經諺解≫ 1898年(光武2年) 密陽 表忠寺版

国立図書館韋滄文庫,東国大学校図書館所蔵.39張1冊.もとの表紙の上に被せて改装した表紙に「阿彌陀經全諺譯」と左側上段に書かれ,右側上段に「附/ 高王經 夢授經 懺悔法/ 光明經」と書かれ,「高王經 夢授經」の脇に小さい文字で各々「諺譯」と書かれている.

  • 本の大きさ:縦19.3cm×横13.0cm

  • 版式:四周単辺

  • 行款:8行18字

  • 半葉匡郭:縦19.2cm×横12.5cm

  • 内題:佛説阿彌陀經

  • 版心題:彌經/高王經 懺悔經/光明經

  • 魚尾:?

内容は初張に「皇上陛下聖壽萬歳/皇后陛下聖壽萬歳/太子殿下聖壽萬歳/恩無不酬コ無不報/天下太平法輪常轉」という祈願5行がある.その裏面上段には「佛頂心觀世音菩薩姥陀羅尼曰」と梵文字で書かれ,下段に陀羅尼の音訳がある.第2張目から張次表示が始まる.張次表示がある第1張には「佛説阿彌陀經/姚秦三藏法師鳩摩羅什奉 詔譯」と書かれ,3行目から漢文経典が第10張まで続く.版心は「阿一…」.次は「불셜아미타경」の音訳で「여시아문,일시불,,샤위국,기수급고독원,…」のようになっており,漢字の音訳と「무량슈불셩왕졍토쥬」など7つの陀羅尼が第10張まで続く.版心は「阿經一…」.その次に版心が「高王經一…」で第5張まで「佛説高王觀世音經」漢文経典とその音訳があり,この5張の終わりにも「光武二年戊戌五月日慶尚道密陽表忠寺西上庵開刊…」という刊記がある.さらに版心が「懺悔法一…」で第3張まで「誓滅重罪三十五佛」が漢文のみ,その次に版心が「光明經一…」となっている「佛説大乘聖無量壽決定光明王如來陀羅尼經」の漢文が第9張表で終わる.その裏面に施主帙と「光武二年戊戌五月日慶尚道密陽郡載樂山表忠寺開刊」とかう刊記があり終わる.この本は音譯でありながら徳寺版本とは異なり口訣がない.

  ≪佛説阿彌陀經≫ 刊行年代,刊行地未詳

国立図書館일산文庫(일산古1745-9)所蔵.21張1冊.五針眼訂法の線装本.表紙は刊行当時のもの.外題は筆書で「彌陀經」と書かれている.

  • 本の大きさ:縦29.0cm×横10.0cm

  • 版式:四周単辺

  • 行款:有界 10行19字 諺解は25,6字

  • 半葉匡郭:縦20.8cm×横13.3cm

  • 内題:佛説阿彌陀經 아미타경

  • 版心題:彌陀經/彌陀經諺解

  • 版心:上下内向花紋K魚尾

内容は阿彌陀經の音訳と諺解.第1張1行に内題,2行に「姚秦三藏法師鳩摩羅什奉 詔譯」,3行に「요진삼장법구마라습봉 됴녁」,4行から本文「如是我聞호니一時에佛이在舍衛國衹樹給孤獨」,5行に音訳「여시아문호니일시에불이샤위국지슈급고독」がある.その後本文と音訳が1行ずつ交互に書かれる.14張表面7行までで終わり,尾題に「佛説一切諸佛所護念經」を8,9行に書き,裏面1行に「블셜아미타경언」と諺解の内題があり,2行から「이내듯오니일시예브리…」のように諺解文が始まり,20張裏面6行で終わる.その後,「므량슈블셜왕졍토쥬」などの真言が21張表面9行で終わる.15張から21張までの版心題は「彌陀經諺解」となっているが,張次は前から連続したものになっている.21張裏面には後に本を所蔵していた人が筆で「燒萬病眞言」など7つの真言名を漢字で,真言はハングルで書いたものがある.
刊記はなくいつどこで刊行されたものかは分からないが,およそ19世紀前半頃と推測される.その根拠については金英培外(1997:53)を参照.

 ※版本間の比較については金英培外(1997:57-62)を参照.

  漢訳本と影印本

 

  漢譯本

漢訳本とその影本の情報は以下の通り.

  • 佛説阿彌陀經 1卷 鳩摩羅什譯 姚秦弘始 4年(402 A.D.)

    • 高麗大藏經 第11,pp.185-189,東國大學校 影印,1959年

  • 小無量數經 1卷 求那跋陀羅譯 宋 孝康 年間(424-454 A.D.)

  • 稱讚淨土佛攝經 1卷 玄裝(?奘)譯 唐 永徽元年(650 A.D.)

    • 大正新修大藏經 第12,pp.346-348,大正新修大藏經刊行委員會,1923/1967年

上の2つは≪高麗大藏經≫と≪大正新修大藏經≫で見ることができる.ただし,2番目は全部ではなく,一部分のみが「跋一切業障根本得生淨土神呪」として伝わる(大正新修大藏經 第12 p.351).諺解の底本になったのは1番目の佛説阿彌陀經で,原文に隋の天臺大師智(531-597)の注釈をつけたもの.原文にのみ口訣をふり諺解したもの.

  影印本

現在見ることができる影印本は以下の通り.

  • 季刊書誌學報第10號(1993):活字本 崔銀圭の解題あり

  • 정양사(1958年):≪佛頂心經≫と共に影印

  • 亞細亞文化社(1974年):≪觀音經≫と共に影印,李熙昇の解題あり

  • 大提閣(1977年):≪金剛經諺解≫≪佛經諺解≫と合本.


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[最終更新日時:2006/05/23 21:38:41]

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